Vol.60 ジェネリックバイアグラ

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インターネットで「ジェネリックバイアグラ」と検索するとインド製のED治療薬がゾロゾロできてきます。錠剤では「カマグラ」「シラグラ」「ペネグラ」「カベルタ」などが代表的ですが、剤形は錠剤タイプだけでなく水に溶かして飲む粉末タイプや、舌の上で溶かすシート状など、さまざまなタイプが製造されています。 
しかし、実は現在のところ、厳密な意味でのジェネリックバイアグラというものは存在しません。ジェネリック医薬品(または後発医薬品)とは、特許が切れた医薬品を他の製薬会社が製造あるいは供給する医薬品のことをさしますが、ファイザー製薬が1998年に販売を開始したバイアグラ(主成分:シルデナフィル)はまだ特許が切れていないので、ジェネリックバイアグラを製造することは特許侵害にあたるからです。
では、現在ジェネリックバイアグラとして扱われている「カマグラ」「シラグラ」「ペネグラ」「カベルタ」は、どういう位置づけの薬なのでしょうか?
「カマグラ」をはじめとする、コピーED治療薬(いわゆるジェネリックバイアグラ)のほとんどはインドで製造されています。その理由として、インドの特許制度が他の国と異なり(とくに大規模製薬が可能な国々と異なり)、医薬品の成分特許を認めていないことが挙げられます。医薬品の特許は「製法特許」と「成分特許」に分けられるのですが、インドでは「医薬品の主成分となる化合物自体はもともと地球上に存在しており、偶然それを発見したことは特許の対象にならない。ただし、それを大量に精製し、医薬品として製造する工程には知識や技術が必要であり、特許の対象となる。」という解釈から、製法特許のみを認めています。つまり、インドでは同じ成分の薬剤であっても、違う製法で作られていれば別モノとして扱われます。このため、インドの製薬会社はバイアグラの主成分であるシルデナフィルを本家ファイザー製薬と少しだけ違う製法でつくり、特許料を支払うことなく安価に大量に製造できるのです。この方法で、インドの製薬会社はED治療薬に限らず、HIVの治療薬などをはじめとする多くのコピー医薬品を安価に製造しています。一見ずるいように思える手法ですが、このようなインド政府の医薬品政策の恩恵で安価な医薬品がアフリカなどの貧しい患者を救っている現実もあります。いずれにしても、このようにして製造されたインド発のコピー医薬品は特許制度が完備されている先進国では特許侵害になりますので、輸入して国内で販売することはできません。
どうしても入手したい方はインドに直接足を運んで処方を受けるか、個人輸入する以外に入手するほかありません。しかし、輸入代行業者による医薬品の個人輸入には常に偽物をつかまされる可能性が付きまといますので、決してお勧めできません。国内で生命にかかわる健康被害も出ています。
バイアグラの多くの特許は2012年から2013年にかけて切れますので、2013年以降は「カマグラ」「シラグラ」「ペネグラ」「カベルタ」などが正規のジェネリックバイアグラとして日本でも入手可能になるでしょうから、それまでは正規品のバイアグラ処方を国内の医療機関で受けながら、もう少し待っていただくのが賢明だと思います。


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