早漏症(PE)治療法まとめ
PE(Premature ejaculation)とは日本語で早漏症のことで、射精までにかかる時間が短くなることです。
まず医学的に早漏症(PE)と診断されるのはどのような状態でしょうか?
具体的な診断基準は以下のようなものです。
① 膣内挿入後、射精までに所要する時間が2分以内。
② 膣内への挿入前、挿入途中、挿入直後のいずれかの時点で、本人の意思に反して、最小の性的刺激で射精してしまい、これが反復ないし持続する状態。
③ PEの結果、著明な人間関係の問題や精神的苦痛を引き起こしている状態。
④ 射精のコントロールが不能。
①~④の全てを満たすと医学的には早漏症(PE)と診断されますが、①~④のいずれかだけにしか当てはまらなくても治療の対象にはなりえます。
一番大事なことは本人が射精までにかかる時間が短くなることで悩んでいるかどうかです。
巷には民間療法を含め多くの早漏症(PE)治療法があふれています。
しかしながら本当に有効なものはごくわずかであり、言葉は悪いですが多くの患者様が弱みに付け込まれて騙されているようなケースも多いのではないでしょうか。
医療従事者もPEが病気であり治療可能であることをあまり知りません。
渋谷三丁目クリニックでは文献的考察に基づいて現在考えられる有効な治療法を紹介していこうと思います。
今回はオーストラリアの医学雑誌に掲載された早漏症(PE)についてのレビューを中心に説明していきます。Premature ejaculation: A clinical review for the general physician というタイトルの通り一般内科医向けの早漏治療についてのまとめです。
早漏症(PE)の治療法は大きく3つに分類されます。
それぞれ、内科的治療、外科的治療、保存的治療となります。
内科的治療
内服薬、塗り薬による治療です。最も推奨される治療法と言えます。
①プリリジー(ダポキセチン)
プリリジーは薬の系統としては短時間作用型SSRIになります。SSRIの詳細については次の抗うつ薬の項で説明します。プリリジーは早漏症(PE)治療薬として多くの国で認可を受けていて有効性については多くの医学論文でも証明済みです。
残念ながら日本では認可されていないため、使用する場合は海外から輸入する必要があります。
プリリジーは抗うつ薬と違い、非常に効き目が早く性行為の1時間前の内服でPE改善効果が得られるという点です。
有効率は約70%で毎日飲む必要はありません。
具体的には性行為の1時間前にプリリジーを飲むと、有効であった場合には射精までにかかる時間を3倍程度延長することができます。
副作用は吐き気、下痢、頭痛、めまいなどがあります。起立性低血圧(いわゆる脳貧血)がある患者様には使用できませんので処方の前には血圧測定が必要になります。
そしてバイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED治療薬と併用も可能なので早漏症(PE)のみならずEDの症状も持っている人も使用可能です。
現時点では有効率、効果、使用しやすさを考えるとプリリジーはベストな選択肢と言えるでしょう。
プリリジーの詳細はこちら
②抗うつ薬
うつ病の治療に使う抗うつ薬には射精に関わる交感神経(緊張するときに働く神経)の過剰な興奮を抑えることで早漏症(PE)を改善する効果があります。
三環系抗うつ薬とSSRIという種類の薬には早漏症(PE)改善作用があることが知られています。
しかし、三環系抗うつ薬は抗コリン作用による吐き気、口の渇き、顔面紅潮などの副作用が強く出る上にEDも副作用で生じやすいためにPE治療ではまず使用されません。
SSRIはセロトニン再取り込み阻害薬といわれ、セロトニンという神経伝達物質の量を増やす薬です。
早漏症(PE)はセロトニン不足により交感神経が強く働くことで起きていることも多いためセロトニンを増やすことで症状が改善するわけです。
この作用機序はプリリジーも同じです。
またSSRIは三環系抗うつ薬と比べると副作用が少ないという特徴があります。
SSRIにはパキシル(パロキセチン)、プロザック(フルオキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)などがありますが、射精までにかかる時間をフルオキセチンとセルトラリンは約5倍、パロキセチンに至っては約10倍に延長する効果があると言われています。
これだけ聞くとプリリジーの3倍より効くので抗うつ薬としてのSSRIのほうが優れているように思えますが実は大きな弱点があります。それは飲み始めてから効果が出るまでに5時間はかかることです。いざという場合には絶対に間に合いません。また半減期が長いため体からなかなか抜けないという点もよろしくありません。
そして性行為の前だけに飲む頓用では有効率も非常に低いということも使い勝手を悪くしています。
ある程度の有効率を求めるためには毎日内服を続けていく必要があります。副作用が少な目とはいえ不定期におこなう性行為のためだけに抗うつ薬を毎日飲み続けるというのはあまりお勧めできません。
パキシルは25歳未満の若年者に使用した場合、自殺企図という重大な副作用の報告もあるため安易な長期使用はすべきではないと思います。
ただし、毎日のように性行為をする非若年者にとっては使い勝手がいいのかもしれません。
その他にSSRIには不眠、不安、性欲減退、EDなどの副作用がでることも知られています。
③ED治療薬
バイアグラ、レビトラ、シアリスなどのED治療薬も場合によっては早漏症(PE)治療に用いられることがあります。
EDがあると3割くらいの人には二次的に早漏症(PE)の症状も出てきます。
これは勃起を維持するために過剰な刺激を与える必要があるためだと考えられています。
このようなケースではEDが早漏症(PE)の原因なのでEDを改善すればいいわけです。
しかし、EDではない純粋な早漏症(PE)の場合はED治療薬単独ではあまり効果を期待できません。
④トラマール
トラマール(トラマドール)はオピオイド系(医療用麻薬)の鎮痛剤です。
がんの痛みを取ったり、慢性疼痛を抑えたりするために使われることが多い薬になります。
しかし、トラマールにも早漏症(PE)改善効果があるという報告があります。
有効だった場合には射精までにかかる時間を4~7倍程度延長させることができるようです。同じ医療用麻薬であるモルヒネやフェンタニルにそのような効果があるかは不明です。
トラマールは日本でも処方は可能なのですが麻薬に準じた扱いの薬であるため依存性などの問題もあり早漏症(PE)治療で処方されることはありません。
リドカインやプリロカインなどの局所麻酔薬を含んだクリームなどを使用することで早漏症(PE)が改善することが報告されています。
局所麻酔薬とは歯医者さんなどの注射でよく使われているので多くの方に使用経験があると思います。注射されてしばらくすると感覚がマヒしてきて歯を削られているのもよくわからなくなる感覚を思い出してください。
同じようなイメージで亀頭部分に局所麻酔薬を塗れば感覚が鈍くなることは想像に難くないでしょう。
性行為の20~30分前に使用すれば射精までにかかる時間を4~6倍延長できます。
問題点としては自分のペニスが無感覚になるため性行為の質が低下するということです。また、コンドームを使用しないとパートナーの性器にも局所麻酔が移行して感覚がなくなってしまいます。
内服薬との併用も可能なので、より強力に早漏症(PE)治療を行いたいときには非常に役立つ薬と言えます。
日本ではエムラクリームという名前で販売されていますが、早漏症(PE)治療は適応症ではありません。適応外処方という形で処方は可能ですが、取り扱い医療機関は限られます。
外科的治療
結論から申し上げますとPE治療には外科的治療は推奨しません。理由としては明らかな医学手根拠がないためです。
一応、いくつかの外科的治療を紹介しておきます。
①包茎手術
美容系クリニックを中心に包茎手術をすればPEが改善するようなことを宣伝していることがありますが医学的根拠は実はありません。
高額かつ体に負担がかかるうえ効果が期待できないというのであれば基本的には選択肢には入らないでしょう。
しかし、PEと関係なく包茎にコンプレックスを持っていて治したいという場合には病院を選んで治療を受けるのは構わないと思います。
②ヒアルロン酸、ボトックス
包茎手術以外にもヒアルロン酸を亀頭に注入したりボトックスを注入したりする方法も報告としてあります。
有効だという報告もあるようですが、まだ検討が必要な実験的治療の要素が大きいため現状では積極的におこなうものではないと思います。
③鍼治療
鍼治療が有効だったという報告もあるようですが具体的にはどのようなものかわかりません。レビューではデータがないので効果は不明とのことでした。
しかし、根治するわけでなければ性行為の前に毎回鍼治療するわけにもいきませんのでそもそも現実的ではないでしょう。
保存的治療
侵襲的な行為や投薬を行わない治療、要するに薬も飲まず手術もしない治療法のことです。
主にメンタルへ働き掛けるカウンセリングが中心になります。
①心理療法
カウンセリングなどで早漏症(PE)による精神的苦痛を軽減させます。時間とコストがかかり効果も薄いのがデメリットですが、後述する他の治療に組み合わせられることが可能です。
症状自体はさほどではないのに本人が過剰に気にしているようなケースでは有効です。
また、明らかな心的トラウマがあるような場合は極めて有効です。
②行動療法
カウンセリングと違い医療行為ではない行動で早漏症(PE)を抑えようという試みです。
(1)性行為の前のマスターベーション
性行為前にマスターベーションをすることで射精までにかかる時間を延長させようという考え方です。実際にはデータがあまりないため有効性については不明です。
(2)ストップ・スタート法
性行為中にあえて行為を中断することで興奮を鎮めるという方法です。
(3)スクイーズ法
これは性行為中で射精に至りそうになったら亀頭を強く握ることで興奮を抑えるという方法です。
(4)複数のコンドーム
複数枚のコンドームを使用することで感度を低下させて早漏症(PE)を改善させるという方法です。
上記4つの方法は内科的治療と併用することで早漏症(PE)を改善させる可能性があると述べているレビューもありますがデータは少ないのが難点です。医学的根拠までは証明されていないが場合よっては効果があるというレベルでしょう。
結論
早漏症(PE)治療には、内科的治療が推奨されます。
カウンセリングなどは良い補助手段と考えられます。外科的治療は医学的根拠が不足しているため避けた方が無難です。
内科的治療の問題点としては日本ではPEを適応症とする薬は認可されていないため輸入薬品や適応外処方で対応するしかないことです。
そして早漏症(PE)治療に対する医薬品の取り扱いや早漏症(PE)に関する根本的な知識が豊富な医療機関が少ないというのも問題です。
お悩みの方は当院お問い合わせページからお気軽にお問い合わせください。
早漏症(PE)は、非常にデリケートな問題です。 渋谷三丁目クリニックではプライバシー保護にも十分に配慮しております。 渋谷三丁目クリニックはドクターをはじめスタッフはすべて男性ですので、男性特有の悩みを安心してご相談いただけます。 また、すべて院内処方を採用しており、無用な他者との接触を回避することができます。
当クリニックは渋谷駅から徒歩1分の立地にあるビル内のクリニックですが同じフロアに他店舗はなく、エレベーターで待合室に直接入れます。詳しくはアクセスを御覧下さい。
また、当クリニックから患者様宛に郵便物などは一切送付いたしませんのでご安心ください。
早漏症(PE)治療は健康保険がききません。 そのため早漏症(PE)診療をご希望の方は来院時に保険証をお持ちいただく必要はありません。
渋谷三丁目クリニックホームページでは、早漏症(PE)治療のQ&Aをご用意しています。早漏治療にあたり、ご不明な点がございましたら、ご参考になさってください。もちろん、お電話で早漏症(PE)治療のご相談も承っております。
ご来院、お待ちしております。
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